テーマソングからGXの構造に迫れ!
遊☆戯☆王デュエルモンスターズGX徹底解析
100318

思いつきでテーマソングを分析してみたら、意外に核心に迫れたブログ記事を元に再編集したものです。GXはどんな風に進化を遂げていたのか?驚きの新事実が発覚する、かも?

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Phase1.GXの「第一章」はどこまで?
Phase2.「第一章」と「第1期」
Phase3.多重化するストーリー
Phase4.「第2期」の主役は誰?
Phase5.本番開始 ― 十代のターン!
Phase6.それぞれの未来へ

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Phase1.GXの「第一章」はどこまで?

■OP1 快晴・上昇・ハレルーヤ/JINDOU
明日への地図を広げて 一緒に行こうぜGo along along

■ED1 限界バトル/JAM Project
限界バトルかっとばして 燃えつきりゃ最高じゃない
世界中が この時代が さぁ お前とRide on!


 第一期前半、TURN-1からTURN-33まで使われた初代OPとEDです。
 この2曲のメッセージは実に単純明快、「怖がらずに一緒に行こう!」
 これが、遊戯に憧れて、今まで知らなかった人たちだらけのデュエルアカデミアに入学する十代が、視聴者も巻き込みつつ、そこで出会う仲間たちに向けて発した最初のメッセージです。
 歌そのもののイメージはと言えば、非常に明るく前向きな歌詞と、ラップ調のOP、アニメソングと言えばこれ!というJAMprojectらしいED、スピード感あふれるメロディーラインが特徴で、おそらく最初から見ていた視聴者にとっては、「GXらしさ」はこの2曲で代表されると言っても言いすぎではないと思います。
 そしてこの2曲は、そのまま「十代らしさ」を象徴する歌でもあります。

 この2曲の不思議さは、第1期を1年通して使われるのではなく、TURN-33「輝け!シャイニング・フレア・ウィングマン」という、セブンスターズ編※1のやや中途半端なところまでしか使われなかったことにあります。
 この不思議さを考えるために、まずは次の2曲を紹介したいと思います。

■OP2 99%(セブンスターズ版)/BOWL
鍵をかけた部屋 独りぼっちで君が泣いてた
うつむくその目に昨日ばかり映しても進めやしないさ

■ED2 Wake up your heart(セブンスターズ版)/KENN with The NaB's
まだ見えない 自分の居場所を探して 歩き続ける


 第2期まで通して使われるこの2曲ですが、映像でも区切っていきます。この2曲がセブンスターズ編の映像で使われたのは、第1期後半、TURN-34〜TURN-52です。

 「99%」は、曲調こそポップで明るいものですが、その歌詞には前2曲には見られなかった「寂しさ」が打ち出されています。しかも、OP映像のうつむいた十代の表情を見れば一目瞭然な通り、「99%」は十代への歌です。
 対して「Wake up your heart」は、十代の声優であるKENN自ら歌う、実質的な十代のキャラクターソングです。その曲調・全体的な方向性は前向きながらも、やはり何かしらの寂しさや不安を思わせる部分があります。

 この2曲が使われ始めたTURN-34とはどんな話だったのでしょうか?
 TURN-34「湯けむり旅情! 青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)」
 この話は、カミューラとのデュエルによって、クロノス・亮が人形と化され、「仲間を失う」という疑似体験※2をし、また、カミューラの最期を目の当たりにしたことによって、十代が「デュエルって楽しいものじゃなかったのか…?」と落ち込んでしまっていたところ、ハネクリボーの導きでレッド寮の仲間たちと共に精霊の世界に迷い込んでしまい、そこで「カイバーマン」という精霊の長と全力のデュエルをすることによって、十代が「デュエルを楽しむ気持ち」を取り戻す、という話です。
 海馬のイメージが強すぎてストーリー上の意味が霞みがちなこの話ですが、こうして見ると、ファンサービスだけで挿入されたわけではないのは一目瞭然です。これは、精霊が十代を守った話なんです。

 テーマソングの切り替えに話を戻します。
 まず、もしも「セブンスターズ編」という区切りで考えるなら、テーマソングを差し替えるタイミングは、セブンスターの先鋒となるダークネスの伏線が入るTURN-27「課外授業は闇のデュエル!?(前編)」が、最も妥当なように感じます。話数としても、TURN-26までが一年目のちょうど半分です。
 しかも、OP2の映像にはダークネス・カミューラという、「TURN-33までの間に倒されてしまった敵」も描かれていて、テーマソングの交代は、一見「間に合わなかった差し替え」であるかのような印象を受けます。このシーンは、視聴者にとって最初から「回想」になってしまっているからです。

 しかし、実はTURN-33が、「おお、十代いいじゃん」とDM抜きでGXを楽しみ始めるきっかけの話だった私はふと思った…これは、本当に「間に合わなかった差し替え」なんだろうか?

 TURN-33までには何があったかを考えてみます。TURN-33までには、十代がそれぞれ、明日香・万丈目・タイタン・翔・亮・サイコ・ショッカー・アカデミア一般生徒・レイ・三沢・吹雪(ダークネス)・カミューラという、2期以降の追加キャラを除くメインキャラ※3と、「精霊」や「敵」とのデュエルを完了しています。そして、第1期ラストデュエルの締めにも登場する十代の「最初の切り札」である「シャイニング・フレア・ウィングマン」が登場して終わっています。

 十代から仲間への歌となっている初期テーマソング、十代が「これから関わる存在」と一通りのデュエルを完了したと言える本編内容。これを踏まえると、TURN-1からTURN-33は、長い長い「十代の自己紹介」の期間なのではないかと思います。GXを「十代の成長物語」として捉えたときの、GXの「最初の区切り」は、確かにTURN-33/TURN-34なんです。


Phase2.「第一章」と「第1期」

 「快晴・上昇・ハレルーヤ」の最初に登場するキャラクター、十代・翔・三沢・隼人。十代と翔は「ダブル主人公」的な印象もある二人※4ですが、隼人は第1期で退学(実質卒業)するキャラクター、三沢は徐々にその存在が霞んでいき、第3期で完全退場するキャラクターです。
 これは、GXの計画倒れと受け取られることが多いような気がします。
 もちろんその可能性もなくはないのですが、しかし逆に、この二人の扱いが決まっていたからこそのボーナスと考えることもできます。つまり、「いずれいなくなるキャラクターだからこそ、目立たせるには今しかない」という、制作サイドの思惑だったのではないか、と。
 「十代の自己紹介」に当たる「第一章」ですが、これは同時に「三沢の栄光の日々」にも当たります。テーマソング交代のほぼ直後のタニヤとの出会いが、2年後、「三沢の居場所」を決定づけています。
 あくまで全て予定されていたようにも見えるのは、私だけでしょうか。

 「自己紹介」のラストデュエルで、奇しくも十代は「自分らしさ」を脅かされる事態に出会っています。その十代の「自分らしさ」を、精霊は守った。精霊に守られながら、十代は「まだ見えない自分の居場所を探して歩き続け」ています。意識的にはどうあれ、テーマソングの言葉を信じるなら、十代もまた、意外にも「居場所はまだない」と感じています。

 「99%」にテーマソングが切り替わったときに、GXはストーリー自体もある種の変質を遂げています。「99%」の期間に関わったセブンスターズとのデュエルでは、敗北した敵側にも、残酷な結末はほとんどありません。例外は、明日香が吹雪の記憶を取り戻すために倒したタイタンと、十代に「融合の才能」を見出すアムナエルだけです。そしてアムナエル=大徳寺先生は、ファラオによって一応の救済が用意されています。
 「融合の才能」は、十代が十代たる所以であり、十代の強さの源であり、カミューラ戦で十代を落ち込ませた「楽しくないデュエル」―つまり、3期のメインテーマであるヒーローの宿命と関わる重要な要素です。
 GXは最初から、デュエルが「命のやりとり」になる展開、ヒーローの背負う過酷な宿命を描くつもりはあったのだと思います。けれど、それを描く前に、十代をヒーローの宿命に向き合わせる前に、それを乗り越えるための仲間との絆=仲間との思い出を築かせるのが、「99%」「Wake up your heart」期間の目標だったのだと思います。
 さらに、吹雪と関わるタイタンの最期は、ダークネスが他のセブンスターズとは異質であることを示唆しているように思います。将来ダークネスが「本当の敵」になる予定は、この時点であったのだと思います。どんだけ気が長いんだ

 TURN-33までは、「十代の自己紹介」だったとします。それなら、「第一期」は、何なのでしょうか。残る内容はセブンスターズとの決着、十代に見出される「融合」という才能、ちょっとした恋話、精霊の力を使ってアカデミアを守るボス戦、進路と卒業。

 おそらく「第1期」は、「GXという作品全体の自己紹介」―つまり、主題の提示、プロローグです。


Phase3.多重化するストーリー

■OP2.5 99%(第二期版)/BOWL
99パーセントわからないから 明日を確かめに行こう

■ED2.5 Wake up your heart(第二期版)/KENN with The NaB's
夢みる世界 目指し 力の限り 駆けてゆこう


 歌詞の引用箇所を変えましたが、別に本編で使用箇所は変わってません、念のため(笑)
 TURN-53からTURN-104の第二期の間、歌はそのままで映像だけ差し替えたOP・EDとなっています。

 OP映像はエロゲ風と名高い(笑)「名前テロップつき登場人物紹介」入りのもので、毎回その日の本編映像がダイジェスト的に挟まれる仕様になっています。
 ここで名前を紹介されているのは、十代・万丈目・翔・明日香・三沢・ナポレオン教頭・剣山・エド・クロノス教諭・ファラオ。クロノス教諭については、途中の地位変更のたびに若干映像も変わっています。
 OPの最初には、無数のカードを並べてモザイク的に表現されたハネクリボー。なんとなく象徴的です。
 対してOP最後にはファラオ・吹雪・万丈目・明日香・翔・十代・剣山・三沢の集合図が来ます。
この図で特に気になる点は、

・吹雪と剣山だけしゃがんでいる。
・主人公が入りそうな真ん中ポジションを翔が陣取っている。


の二つ。

 名前付き紹介で取り上げられていないにも関わらず、最後の集合のときにはきちんと描かれている吹雪は、あくまで座っています。そして2期内容を思い返せば、吹雪はデュエルこそ明日香・亮と二回ありますが、ストーリー上はほぼ完全に蚊帳の外です。これはひょっとして、「吹雪は今期お休み」と宣言している図だったりするんじゃないだろうか…?
 しかし、剣山はと言えば、ストーリー上はむしろ2期こそ剣山の見せ場です。吹雪といっしょくたにしてしまうとちょっと違う気がします。
 それなら、「何故座っているか」ではなく、「何故立っているか」のほうを見てみます。すると、こういう仮説が立ちます。

これは、GXがメインで描きたいキャラクターは、あくまで立っている5人、万丈目・明日香・翔・十代・三沢という「第1期の一年生」だという意思表示なのではないか?

 翔が真ん中に来るのは何故かを考えます。
 2期の翔は、亮を慕うブルー女子・胡蝶蘭とのデュエルに勝ってイエローに昇格、剣山と十代の弟分の座をめぐって勝利、その剣山とタッグを組んで敗北、ジェネックスを勝ち進み、ヘルカイザーとなった亮と闘うも敗北、しかしそのデュエルで、翔はリスペクトデュエルをマスターします。
 3年半のうち、翔の半数以上のデュエルが第2期の一年に集中しています。この間に翔は何をしているかというと、「十代の弟分というポジションを自ら望んで勝ち取り、ライバルと共に闘い、「パワー・ボンド」を使いこなして(リスペクトデュエルをマスターして)亮の監督下から完全に卒業」しています。
 十代ではなく、亮との絡みで見たとき、2期の翔は、「亮のデュエルから学んだリスペクトデュエル」をマスターし、「幼い頃に亮から封印するように言われたパワー・ボンド」※5を使いこなすことを目標にした、ひとつのストーリーとして読むことができます。
 つまり2年目は、翔を主役=主人公代理にした軸が一本、本筋とは別にあったと考えることができます。

 話はそこで終わりません。
 まず、第2期ラストのカオスすぎる展開を見れば一目瞭然な通り、万丈目をメインにした軸が一本見つかります。ここであからさまなのは、VS光の波動という十代がメインに関わっているストーリーとジェネックスがほぼ無関係※6だということです。
 光の結社に関係してはいても、明日香をめぐる、吹雪の思い、万丈目の思いと、それを託される十代の立ち位置を見れば、やはり独立していると思われる「ヒロイン・明日香」の物語。
 空気化によってどんどん本編からそれていき、完全に逸脱する三沢。
 これは何を意味しているのでしょうか。


Phase4.「第2期」の主役は誰?

 「テーマソングが変わっていない」という事態を予定調和と捉えるなら、「十代の自己紹介」で区切った場合に、そこから先の話はまだ続いている、という宣言だと解釈することができます。では、「続いている話」とは何なのでしょうか。
 十代の「デュエルを楽しむ」という自分らしさは、34話以降に登場するセブンスターズや亮にも影響を与えていたし、2期ではエドに大切な思いを思い出させます。そして、十代はエドの運命を狂わせた敵を倒す―ヒーローとしての役割を果たします。
 つまり、第1期の後半から第2期、「99%」の期間は、十代が「自分らしさ」によって周囲に影響を与え、無意図的にヒーローとして活躍する時期と考えることができます。

 こうして見てみると、第2期というのは十代(&剣山)がヒーローとして登場する「エドのストーリー」を主軸にして、同じく十代をヒーローとして登場させながら、「翔のストーリー」、「万丈目のストーリー」、「三沢のストーリー」、「明日香のストーリー」が、絡み合いながらもそれぞれ独立に進行していたと言えます。
 付け加えると、OPにこそ登場していませんが、「亮のストーリー」も同様です。亮がOPに登場しないのは、第2期の彼のメインの立ち位置があくまで「敵」サイド(絆を断ち切る人)であり、「翔のストーリーのラストボス」だからだと思います。

 つまり、「十代の成長物語」としては、第2期は新デッキを入手した以外は第1期後半の繰り返しであり、「主人公の十代」はほぼ開店休業状態で、第2期の主役はサブキャラクター達※7なんです。

 こうして見れば、OPがエロゲ風になった理由もうなずけます。あれは間違いなく、攻略対象それぞれに対応したルートが「ひとつの物語」である恋愛シミュレーションゲーム同様、「キャラクターそれぞれが独自の物語を持っている」という第2期の構造、「十代をヒーローとした物語のオムニバス形式」を象徴していると考えられます。


 すべての布石は整った―思わずTFの亮をパロってしまいたくなります。物語は、クライマックスという名の本題―「十代を待つ運命」へと進んでいきます。
 描かれるのは「運命」です。第2期冒頭TURN-53「運命の始まり! 新入生エド・フェニックス」で言われている「運命」とは、誰の、どこまでの運命の始まりだったのか。

それは十代の、第三期まで含めた運命をも、暗示しているのではないのでしょうか―?


Phase5.本番開始 ― 十代のターン!

■OP3 ティアドロップ/BOWL
いつでもその笑顔 救われてきた僕なんだ
今だけ泣いていいよ ずっとここにいるから
ただ 僕はここにいるから

■ED3 太陽/BITE THE LUNG
ほら いきあたりばったりじゃなく つまらなくてもふてくされないで
太陽(かれ)も世界中照らして 共に生きてる


 第3期に当たるTURN-105からTURN-156。OPはBOWLが続投しており、雰囲気が大きく変わるわけではありませんが、曲調・歌詞ともにさらに繊細なものとなっています。※8
 EDはラップ調(って言っていいのかな?)の「がんばれ」というメッセージに満ちた応援歌ですが、これからの苦難を思わせる内容※9です。

 「ティアドロップ」の映像は何度か細かい部分で差し替えられていますが、アカデミアの近くで立っている十代の部分に注目したいと思います。
 第3期前半は、サブキャラクターたちの物語という形で第2期で枝分かれした筋を収束させる、本格的な「十代の物語」への移行期です。アカデミアの建物前で目を閉じていた十代が目を開けてアカデミアのほうを向くシーンは、第2期で眠っていた「主人公の十代」の目覚め、差し替え後の最初からアカデミアのほうを向いている十代は、「十代の物語」への筋の収束完了を示していると見ていいのではないかと思います。

 第3期では、ぽっと出のヨハンがなんでいきなり親友になるんだ、とよく言われているような気がします。しかしこれはむしろ、十代の「親友」ヨハンが何故第3期で登場するのか、と考えた方がいいのではないかと思います。
 そしてその答えは―普通の物語なら、話は3期から始めるから、なのではないかと。

 要するにこう言うことです。第3期だけで「ひとつの物語」として見たときに、ヨハンの留学はよくある第一話「謎の転校生」です。この構造は第2期のエドもまったく同じだし、先取りして言えば、正体はオネストとはいえ、藤原の帰還も同じです。
 つまりGXは、一貫した「十代の成長物語」の中に、多重構造として「サブキャラクターのストーリー」を巧妙に織り込むことで、1年ごとの「新シリーズ」を独立した話としても作るという、えらく入り組んだ作りになっていると考えられます。はっきり言って私はスタッフが怖い。
 案外、どこで打ち切られてもいいようにこの構造なのかもしれませんが(…)

 第3期前半は、第2期と同じ手法で留学生たちの個性を描きながら、十代に「力の責任」を云々する佐藤先生(TURN-113・114)が現れ、コブラ戦(TURN-117・118・119)で暗い影が差し、マルタン戦(TURN-129・130)でとうとう十代は運命の相手、精霊ユベルと再会します。※10
 ユベルの計略の中で、第2期までの仲間たちは、十代の仲間であるために、十代を傷つけるためにユベルに利用されます。※11留学生組は、ユベルに目をつけられないという意味でも、十代から少し距離をおいて考えられるという意味でも、仲間になって日の浅い人間が必要だったために第3期に登場したと考えることもできます。
 異次元世界編では、十代に「見せる生き様」として、第2期のストーリーの中で決着のついていなかった「亮のストーリー」「三沢のストーリー」が完結し、十代が「運命を受け入れる」ことで終結を迎えます。
 TURN-155の十代とユベルの超融合は、十代の子ども時代の終わりを意味します。そして、ユベルは「共に戦おう」と、十代の新しい始まりを暗示します。

 第4期は、運命を受け入れた十代がその運命の中でどう道を切り開いていくか、すべてのキャラクターが、どう未来を切り開いていくか、というストーリーになっていきます。


Phase6.それぞれの未来へ

■OP4 Precious Time, Glory Days/サイキックラバー
忘れないよ はじめての夢 追い続けて Keep Holding On!

■ED4 Endless Dream/きただにひろし
最強のカードでつかみとれ! 輝くデュエルの果てなき夢を
どんなに辛いときがあっても 信じる仲間の笑顔抱いて


 歌い手も一新し、曲調も一期の頃に近い明るいものとなった第4期主題歌。
 第4期、未来を切り開くのは「「夢」という自分らしさへの原点回帰」なのですが、OPではこれまでを振り返りながら、それを端的に示しているように思います。その道にあるものが楽しいことばかりではないことももう知ってしまっているけれど、仲間がいるから大丈夫だ、というのがEDです。

 4期の構造はどうなっていたのでしょうか。
 十代はヒーローという運命の象徴、かつて他者を傷つけた、自分が制御を忘れればまた誰かを傷つけるかもしれない「ユベル」を内に秘めていても、仲間として受け入れられたことを知って、ヒーローとしてみんなの夢を守ります。そしてその後、デュエリストとしての自分の夢へと出会います。その相手は、前作主人公・遊戯でした。
 ファンサービスももちろん含まれていると思いますが、これは十代が取り戻すべき「ワクワク」が、未来=未知なるものへの「期待感」、要するにまっさらな気持ち※12であり、デュエル相手が戦ったことのない相手でないといけなかったからだと思います。
 また、このレポートの視点で言えば、十代と「物語の構造レベルで対等な相手」が「主人公」だから、と言うこともできると思います。多重構造のまとめを一手に引き受ける十代は、まさに「GXの主人公」だったのです。

 人生は誰もが主役。GXは、それをTVアニメーションという一筋に制限された媒体だけで描こうとした、かなりの意欲作だったように思います。


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 ここまでお読みいただきありがとうございました。これの初出は2009年8月5日のブログ記事になります。大して変更してるわけでもないのに、改稿に半年かかるなんて思わなかったorz
 相変わらずこれが壮大な深読みじゃないという保証はどこにも無いのですが、それにしては符号が一致しすぎていると思うのですよ。
 一応私は、GXを3期から見始めて亮を中心にざっと見渡して最終話まで見たときにすげぇ筋の通ったストーリーだと思った人だということもあり、GXが無計画な話だとは全く思いません。
 GXの筋自体は、相当よく練られたシナリオだと思います。その一方で世界観のフリーダムさが異常なんですが(笑)、その理由を好意的に解釈すればこういうことになるかと思います。

人の数だけ世界観はある。その全てが重なり合い、時にはズレたり軋んだり離れたりしながら、世界は動いていく。「単一の世界観」こそが、夢物語でしかない。

 複数の人間の世界観を、重ね合わせて共有させるからこそ出てくるストーリーのブレや歪み。それはそれぞれの世界観を広げるきっかけでもあるので、願わくばブレや歪みだけを取り出して槍玉に挙げるようなことはしないでほしいと、思ったりするのです。
 至らなさ大爆発の考察ですが、GXの良さが少しでも多く伝わってほしいという願いを込めて。

 
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■脚注(練習用なんちゃって脚注なのであまり使い方を信用しないでください・滝汗)
 
※1 豆知識・敵は「セブンスターズ」で、十代達が鍵を守る門の名前は「七門」だったりする。つまり多分、三幻魔を封印しているのは精霊の力。だからユベルに破られるわけですね。とか言いながら自分もドッキリです(爆)なんという見えない伏線…!
 
※2 先取りしてしまうと、セブンスターズ編の中で唯一3回も引っ張ったカミューラ戦は、「3期の予告」だったような感じがします。セブンスターズ編のカムフラージュ度がヤバイ。「セーギのミカタがワルモノを倒す話なんて書く気はさらさらねーんだよ!」と言わんばかりです(爆)
 
※3 カミューラとヨハンの声優さんは同じ入絵加奈子さんなので、ある意味ヨハンも登場してるのかもしれない(笑)
 
※4 特に異世界編は、前作のDMで言えば十代=闇遊戯、翔=表遊戯の印象も強いです。傍観者の翔は、個人的にはDMドーマ編・TURN-163「対決!二人の遊戯」で闇遊戯を叱咤するために出てきた表遊戯に重なります。
 
※5 TURN-8参照。つまり「翔のストーリー」の伏線はTURN-7・8に入っているのですが、それが本格的に始まったのはTURN-56「翔VS昆虫少女! インセクト・プリンセス」からなんですね。
 
※6 おそらくジェネックスは、単純に「十代の成長物語」を描くためには不要なものであり、「万丈目が優勝する=アカデミアで一番になる」「プロの亮をアカデミアに呼び戻す」「レイに飛び級させる」ことを主な目標にしたギミック(仕掛け)、一種のトリックなのではないかと思います。
 
※7 DDがエドのラスボスなら、破滅の光@斎王は十代の中ボスです。破滅の光@斎王のセリフには、「怒りにまかせて相手を叩き伏せ、破壊した気持ちは爽快だったろう」というTURN-136覇王化の伏線らしきものが入ってます。
 
※8 OPはみんなから十代が基本だけど十代からみんなとか十代からユベルとかもありだと思ってます。「ティアドロップ」は、誰の歌っていうより、本当に「GXのテーマソング」なんだろうなと。
 
※9 これ書くのに歌詞を見返して思ったんですが、「太陽」が亮から十代すぎて吹いた。いや、前から思ってないこともなかったんですけど、でも今すごい思ったよ、なんだこれ亮の歌じゃないの?(笑)
 
※10 ユベル関連の伏線らしきものは、TURN-1で十代に注目していた鮫島校長、第2期?(※すみません、自分で確認してない股聞き情報です)の「あれ、でも、精霊が見えるようになったのっていつだっけ?」的な十代のセリフなど。まぁ、ハッタリの可能性もなくはないですが(笑)
 
※11 いわゆる邪心経典。2期追加組のエドの話ですが、アモンVSエドは「アモンのストーリー」として重要なのですが、エドが十代に力を貸したいと思ったりアモンを許せないと思ったりで戦ったのは、十代との絆がどうこうっていうより、そもそも「エドは結構情に厚い」って描写なわけで、「エドのストーリー」で言えば「番外編」だったかなという気もします。
 
※12 逆にTURN-161・162で明日香と戦って思い出したワクワクは、初めて明日香と戦ったときに明日香に対して感じた「すげぇ!」という感動のほうで、明日香が十代に与えたのは、「変わらないものもある」という安心感だったんだと思います。同じようなセリフで構成されているので分かりにくいですが。…これはひょっとして、シナリオが練れてないと言うべきなのか…? ともあれ、その安心感をアカデミアに感じればこそ、それに甘えないで巣立っていかないと、という話(明日香視点ですが)になっています。

 
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