「勝つためならどんな犠牲も厭わない!」
 あの言葉を聞いたとき生まれた、暗い思いが消えない。
「せめてもの仇はとった…」
 どんどん大きくなっていく。
「そんな、そんな偽善的な台詞…。仇なんてとってもらっても、皆は蘇らない!!」
 そう言った疑いの気持ちは、今もずっと続いてる。


 イクリプス―日蝕―


 アニキに、遊城十代に出会ったのは、デュエルアカデミアの入学試験。
 筆記試験はボクと同じくらい悪いのに、ボクとは全然違う溢れるような自信と、それに裏付けられた力強いデュエルスタイルに、一気に魅せられた。
 寮で同室になったことで、運命まで感じるくらいに。
 ボクに無いものを全部持ってるって、そう思ってしまったから。

 どんな強い相手にも怯まない。
 何があっても、アニキならなんとかしてくれる。

 そんな風に思ってた。


 それなのに、どうしてみんながいなくなるの?

 * * *

「アニキはただ、自分が勝てればそれでいいんだ!」

 ―違う、そんなはずない。

「ボクたちのことなんかどうでもいいんだ」

 ―違う違う違う…っ!だったらなんで、ボクが迷うといつも、傍に居てくれたの?

「今のボクがしなきゃいけないことは、“遊城十代”を忘れること…」

 忘れることなんて出来なかった。
 かつての遊城十代がくれたものは、あまりに多すぎて。
 以前、お兄さんがヘルカイザーになってしまったとき、お兄さんをもとの優しいお兄さんに戻したくて、デュエルを挑んだ。
 今は十代にデュエルを挑もうなんて考えられない。
 だって、手遅れじゃないか。
 もう皆いなくなってしまった。
 もう、何にもできることなんてない…っ。

 ―ボクが勝ったら、アニキが間違ってたってことになるの?負けたらアニキが正しいの?そんなの、どっちも変だよ。アニキはボクのヒーローなのに。

「ボク、どうしたらいいの…」
「もう、お前が決めている」

 兄さんがそういった意味は、正直よく分からなかった。
 ただあの時アニキが言った言葉を、ボクが信じていたアニキの言葉を、もう一度信じてみたかった。

「何も出来ないかもしれなくても、大切な人だからな。もう嫌だっつって言われても、見てる」

 まだ納得できないから、ずっと見てるよ。
 納得できないんだ、どうしてあんなに強かったアニキが、こんなにも弱くなってしまったのか。
 裏切られたって気持ちは消えない。

 ―だって、憧れていたんだ。

 疑いは続いてる。

 * * *

 憧れを捨てきれなくて、疑いを捨てきれなくて、ましてやどちらかひとつを選ぶなんてできなくて、今のボクはどこにも進めないんだ。
 だから見てる。ずっと、見てる。

 十代、キミの答えが出る日まで。

 ―それがボクの精一杯。弱くてごめん、アニキ。

 070721

 
突発的に翔の好感度向上計画発動。
台詞は完全にウロ!嘘八百です。勢いで書かないと書けそうになかったので確認してません。亮のこと、137話では「兄さん」呼びでしたっけ?
「―」のあとの独白は、“疑”の感情玉に打ち消された深層意識という感じで、どうかひとつ。
書いてても「そりゃまずいよ翔…」と言いたくなるほどだったのでまぁ嫌われるのも分かるんですが、たったひとつ、十代がヨハンしか見えてないのと同じレベルで翔には十代しか見えてないということを書きたかったんです。
十代は翔にとってそれこそ太陽だったから、十代が落ちてる間は翔もとことんまで闇に染まっちゃうんだと思います。
 
あ、あと今の私、相変わらず1・2年目ほとんど見てませんので!TURN-1〜11は見たけど!3年目は128からは見てる!
あと某巨大オンライン事典のキャラ紹介は読んでる!(笑)

 
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