ありのままで☆

 良かれと思ってされた発言でも、本人には必要以上に堪(こた)えるということはよくある。
 そしてまた、特に気のない一言が、言われたほうにとって重大な意味を持ってしまうということも、やはりよくあることなのである。
 それはいわゆる家庭訪問を、正真正銘運命の日に変えてしまうことさえあるのだ。

 * * *

「…というわけで、とても良い子なのですが、少し元気すぎるといいますか…調子にのりやすいようで」

 立ち聞きするつもりはなかったのだが、聞こえてしまったものはしょうがない。
 何故こうもタイミングが悪いのか、ともかく最後の一言は幼い吹雪の心にぐさっと突き刺さった。

(ボクって調子に乗ってるんだ…)

 本当のところ、言われている意味はよく分かっていないのだが、自分の行状が否定されたらしいということだけは分かる。
 こっそりと子ども部屋へ戻ると、吹雪の暗い顔を見て明日香が心配そうな顔で言った。
「お兄ちゃん、どうしたの?」
「…明日香、ボク調子に乗ってるんだって」
「ちょうし、にのってるの?」
「うん…」
 おろおろとする明日香に、吹雪は自信なさげに尋ねた。
「明日香、こんなお兄ちゃんは嫌いかい?」
「ううん、大好き!!」
 即座にかえってきた言葉に、にじみそうだった吹雪の涙がひっこんだ。
「え?え?えっと、どこが?」
「え?え?うーんと、お兄ちゃん楽しいし、一緒にあそんでくれるし、ゲームも強いし…わかんないけど、明日香はお兄ちゃん大好きだよ!!」
 それを聞いて、吹雪の気分はみるみるうちに持ち直したのだった。
「そっか…そうだね、明日香はお兄ちゃん大好きだもんね!」
「うん!」
「ボクも明日香が大好きだよ〜!」
「わーい!」

 その日からというもの、ぐっさりときた言葉に続く「クラスから浮いてしまうかもしれない」などという担任の危惧をものともせず、全力で調子に乗り始めた吹雪は、またたくまに学園のアイドルへと成長したのだった。
 シスコン度がパワーアップしたのは、言うまでもない。

 * * *

「兄さん!」
「なんだい明日香?」
「もう、少しは大人しくして!」
「はっはっは、人間素直が一番だよ?」
「兄さんは素直すぎなの!!」

 そんな兄を一番最初に肯定したのが自分だなどということは、全く覚えていない明日香だった。

 070729

 
10JOINが覚醒したのは明日香のせいだったって話が書きたかっただけです(爆)
しかし、子ども部屋とか明日香のお兄ちゃん呼びとかどうなんだ。過去捏造とかしちゃ駄目ですねやっぱり☆
一応、小学一年生くらいのつもり。
タイトルに10JOINな雰囲気出そうとしてついつい「☆」をつけてしまう…。

 
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