プロフェッショナルの駆け引き

「相変わらず絶好調のようだね」
「…お前か」
 プロリーグのデュエル会場で亮に声をかけてきたのはエドだった。
 ヘルカイザーを名乗る亮に、比較的とは言え親しげに話しかける人間など、エドくらいのものではあるが。
 傍から見れば因縁の二人でも、実際にはたいした関係があるわけではない。亮は自分をプロリーグで初めて負かしたのがエドだったことにこだわっていないし、エドも同様だった。あの一戦は、亮にとっては単なるきっかけ、エドにとってはなんの変哲も無いデュエルだ。
「何の用だ?」
 だから、わざわざ声をかけてきたということは、必ず何かあるはずだった。
「頼みたいことがあるんだ。これはボクに来た依頼ではあるんだけど、キミのほうが適任だと思ってね」
「前置きはいい、内容を言え」
「悪かった。とある施設でデュエルをしてほしい。大量のデュエルエナジーが必要なんだ。デュエルアカデミアの危機を救うためにね」
「興味が無いな」
「………」
 一蹴される可能性を考えていなかったわけではなかったが、エドの予想とは多少違った一蹴の仕方だった。本当に興味が無いならそうは言わない。“くだらん”の一言で済む。
 つまり、確実にラストの一言が余計だった。
 どこか人の悪い笑みを浮かべて、エドは続けた。
「…言い方を変えよう。異次元に消えたデュエルアカデミアを引き戻すエネルギーを発生させるためにデュエルしてほしい―が、これは別に気にしなくていい。それだけのエネルギーを発生させるんだ、向こうも相応のデュエリストを用意してくるだろう。十代はもちろん、今、アカデミアには各校のトップが集まっている。闘ってみたいとは思わないか?」
「………。…フッ」
 数秒の沈黙のあと、亮は笑った。
「いいだろう。お前の誘いに乗ってやる」
 それは明らかに余裕の笑みで、エドは微妙に負けた気分になる。
 そんな気分を自分に覚えさせる人間なんてそうは居ない。
 けれど不思議と不快なわけではなくて―むしろ、闘志と興味をかきたてる類のものだった。
「交渉成立だな。詳しい話はまた後程。ボクもこのあと試合があるんでね」
「その様子では、たいした相手ではないようだな」
「これも仕事だ。せいぜい観客を沸かせてくるさ」
 そう言ってから、思いついてエドは言った。
「今のキミとなら面白いデュエルができそうだけどね。外野はうるさいかもしれないが」
「頼まずともそのうち勝手に組まれるカードだろう」
「それもそうだ」
 ヘルカイザーとして復活を果した亮、相変わらずの快進撃を続けるエド、客を呼ぶのにこれほど絶好のカードは無い。適当な連勝記録をアオリに、いずれ再戦はめぐってくる。
「またボクが勝つけどね」
「挑戦者というのも悪くない。勝ち甲斐がある」
 不敵な笑みを交わして、二人のプロデュエリストはその場を後にした。

 070906

127話で普通にエドに紹介されてるヘルカイザーに吹いた。
三期のこの二人のコンビ好きなんです。
プロとしてはカイザーの一枚上を行ってけちょんけちょんにしたエドだけど、やっぱり年齢というか経験というか、人間的に大人なのは亮のほうだったりして。
一緒に行動して「亮」とか呼んでるわりに、亮のこと普通に年上として扱ってるエドと、エドを相応に子ども扱いする亮が微笑ましすぎてならない。
それにしてもプロリーグとか設定が適当なSSだ…(爆)

 
BACK