5 暗闇(ダークネス)

“オレは闇の中にはいない”

 信じられると思っていた。
 自分なら、彼を最後まで信じられると。

 それが蓋を開けてみれば、信じることを諦めて闇に囚われ、彼を救うどころか救われたのは自分のほうだった。

「落ち込むよねぇ…」

 闇に奪われた2年間、学園とプロリーグで離れていた数ヶ月。
 その間に亮の中に起きた変化を、何もわかっていなかった。

 今でも。

「…どうして“ヘルカイザー”なのか…結局教えてくれないし」

 そう呟きながら、そういう問題ではないとも思っていた。
 自分の知らないところで、彼も何かを経験して、変わっていく。
 彼が卒業してから、だけならこんな落ち込み方はしない。
 それよりも以前に、闇に囚われ置き去りにされた時間を、ここまで悔しいと思ったのは初めてだった。

「……一緒にいたら…」

 カイザーと呼ばれるまでに。
 カイザーと呼ばれる隣で。
 自分がいたら、何か変わっただろうか。

 例えばプライドが諸刃の剣にならないように。
 例えば彼を最後まで信じられるように。

 亮の隣で共に歩めていたら、こんな風に置き去りにされた感覚は知らずに済んだのだろうか…。

「…………やめた」

 もしも、なんて、考えても意味が無い。

“光でも照らすことのできない闇を、その力がもたらすものを、知りたかっただけだ”

「そうだね…ボクも…そうだった」

 彼が闇の中にいるのなら。
 そう言って闇の力を使おうとした。
 間違っているとか、間違っていないとか、そんな問題じゃない。

 ただその時は、そうしなければいけないと思ったから。

「ボクももう、闇にはいないよ」

 キミに救われたから。
 それが嬉しくて、それが悔しい。

 だから。

「―追いついてみせる、必ず」

 キミの隣で、対等に歩いていたいから。

 070824

(留年は気にしなくても89話のあれは気にするとかだったらいいなって。ところで行方不明期間勝手に2年って書いたけど本当はどれくらいなんですか??)
吹雪さんの素と中身の性格真逆希望者。

 
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