Smile Again


「オレに構うな、吹雪」
「それは金輪際ってこと?それとも、今のキミに?」
「………」
 振り向かない背中が、すべてを語っている気がした。
(ボクの顔も見たくない?…そうじゃないよね)
 その向こうでどんな表情を隠しているのか、それは想像の域を出なかったけれど。
「…残念だけど、その言葉は聞けないな」
 それでも、今の亮が求めているものが分からないわけじゃない。
「今この場で、キミにデュエルを申し込む。断ったりは、しないだろうね?」
 ゆっくりと、亮が振り向く。
「…いいだろう」
 鋭い視線。
 怒りも蔑みも昂揚も消し去った、何の感情も無いその冷たい瞳を見られるのは、多分吹雪だけだった。
「「デュエル!!」」

 * * *

 激しいデュエルだった。
 攻撃力重視の派手な削り合いが続き、残りライフは両者ともにあとわずか。
 亮の手札はゼロ。
「ドロー!―オーバーロード・フュージョン発動!!」
(ここで引いてくるのか…!)
「墓地から14体の機械族モンスターを除外し、キメラテック・オーバー・ドラゴン、召喚!」
 亮の手札はゼロ、場には攻撃力11200のキメラテック・オーバー・ドラゴンが一体あるのみ。
 吹雪の場には守備モンスターが一体と伏せカードが一枚。
「エヴォリューション・レザルト・バースト!!」
「くっ…っ」
 守備モンスターが破壊され、場には伏せカード一枚が残った。
「ターンエンド」
「ボクのターン、ドロー!」
 吹雪の引いたカードは―
「―魔法(マジック)カード、古(いにしえ)のルール発動。手札から、真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラック・ドラゴン)、攻撃表示で召喚!さらに手札から装備魔法発動、団結の力!」
 古のルールによって特殊召喚された真紅眼の黒竜の攻撃力は2400。団結の力は、自分のコントロールするモンスター一体につき、装備モンスターの攻撃力と守備力を800ポイントアップする。
「フッ…吹雪、それがお前の足掻きか」
「まだだ…!手札から速攻魔法発動、スケープ・ゴート!」
 場に4体の羊トークンが召喚される。団結の力による攻撃力アップは4000となり、レッドアイズの攻撃力は6400。キメラテック・オーバー・ドラゴンには届かない。
 それでも、吹雪は不敵な笑みを浮かべて言った。
「…これで機械族なら、リミッター解除なんか使えるんだろうけどね。ターンエンド」
「オレのターン、ドロー!」
 ドローしたカードを確認して、亮はにやりと笑った。
「…オレが使ってやろうか?」
 吹雪は険しい瞳で見つめた。
「手札から、速攻魔法発動、リミッター解除!」
「…っ」
 これで、キメラテック・オーバー・ドラゴンの攻撃力は2倍の22400。
「これが最後だ!キメラテック・オーバー・ドラゴンで、真紅眼の黒竜を攻撃!エヴォリューション・レザルト・バースト!!」
 この攻撃が通れば、吹雪は負ける。
「…罠(トラップ)カード発動!破壊輪(はかいりん)!!キメラテック・オーバー・ドラゴンを破壊する!!」
「ちっ…!」
 破壊輪は、互いのライフに、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを受けるカード。
 キメラテック・オーバー・ドラゴンの攻撃力は22400。
 たとえライフが初期値の8000あったとしても、十二分にオーバーキルだった。

 * * *

「…引き分けとはな。そんなに負けるのはイヤか?」
「ちょっと違うかな。どうせなら出来る限り全力でって、それだけさ」
「…何が違う」
「絶対負けたくなかったのは本当だけど。ボクのは動機が不純だからね」
「………」
「少しは楽しかった?」
 吹雪は寂しそうに微笑んで言った。

 デュエルを始める前、あの後姿を見たときに。
 本当は抱きしめたかった。
 だけどそんなことをしたら、今の亮を支えているものを、彼ごと壊してしまう気がして。
 それでも、離れて行くことなんてできなくて。
 どこか悲壮な彼の姿から、刹那さが少しでも薄まればいいと思った。
 それが、吹雪が亮にデュエルを申し込んだ理由のすべてだった。

 亮の表情には、感情こそ浮かばなかったけれど。
「…ああ、悪くないデュエルだった」
 その一言が聞けただけで十分だった。
「…ボク、亮に構うのやめないからね?」
「…勝手にしろ」
「ありがとう」
 そう言って笑った吹雪の表情にも、さっきほどの翳りは見えなかった。

 何も変わらないわけじゃない。
 何もできないわけじゃない。
 できることなんて、ほんの少ししかないけれど。
(ボクはいつだって、キミのことが好きなんだ。だから―)

 いつかまた、心からの笑顔を。

 071102

TF2の翔パートナーのラストイベントの直前だと解釈してください(笑)そうすると連戦か…。
あのイベントの繊細すぎる吹雪の表情にやられた。あれどっちって聞かれたら迷わず受けって答える(爆)この話はどっちとも言えないくらいのつもりで書いてますが。
本編以上に亮吹度高いぜ、TF2…あれ同人ゲームだろ(核爆)
出るキャラ出るキャラ性格が妙な方向に増幅されてて、アニメと一致しきらない(笑)

というわけで、何も説明してませんが火山です。吹雪は見かけた亮に世間話しようと話しかけたら世間話するためにここにいるわけじゃないとか言われて冒頭につながるんだと思います、多分(爆)まともに展開考えるの諦めたんだZE。
デュエル展開はもちろん適当ですが、それなりにちゃんと書いてるつもり…。亮はともかく、吹雪の使ってるカードはTF2のデッキ参考にしてます。蛇足ですが、今回の吹雪のデッキは闇竜入ってないってことで、ひとつよろしく。
TF2の吹雪の普段のデッキ、海馬と城之内が喧嘩しそうなデッキだと思うの私だけなんだろうか。

もっと殺伐としたタイトルにしようと思っていましたが、書きながら考えてたラストの展開がこうなって、後付で元ネタ(なんという矛盾!)は合唱曲の「スマイル・アゲイン」になりました。
知ってる人は泣けるかもしれない、というか、一応のつもりで歌詞確認しにいって私は泣きそうになった(核爆)
私が見た歌詞はこちら↓コピペでh足してどうぞ。
ttp://www.hi-ho.ne.jp/momose/mu_title/i_smile_again.htm
単体で名曲なんだよな…。

 
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