case1:藤原は大変なものを盗んでいきました

「吹雪ってさぁ、かっこいいよね」
 向かい合って座っていた藤原からそう言われて、吹雪はワンテンポ遅れた返事をする。
「…随分いきなりだね」
「あれ?今頃気付いたのかとか言わないんだ?」
「いや、藤原がそういうこと言うと思わなくて」
「そう?まぁ突然そう思ったのは確かだけどさ。改めて見てみたら、あー、やっぱりかっこいいなーって」
「どうも」
 調子が崩れたまま元に戻らず、微妙なテンションで返した。
 なんだかおかしい気がする。
 かっこいいと言われて嬉しくないわけではない。
 だが嬉しいのに素直に喜べないのは何故だろう。
「オレは吹雪の顔好きだな」
「はあ」
 ピンポイントな好意に生返事をすれば、
「あー、別にそれ以外も好きだよもちろん?」
 と半端にフォローを入れる藤原は、ただにこにこと笑っているわけで。
(………何考えてるって何も考えてない、何も考えてないんだろうけど…)
「…吹雪?」
 と覗きこむ藤原はどっちかというと可愛いかなとか思い始めてしまい、
(……心臓に悪い。心臓に悪すぎるよ藤原…!)
 なんて吹雪の内心など藤原には知る由もなく。
「吹雪もオレのこと好きだよね」
「え?ああ、うん、もちろん」
 引きつり笑いで答える吹雪の目が虚ろだったことなど、もちろん藤原は知らない。
(…ボク一応、ノーマルだと思ってたんだけどなー…)

 吹雪が恋の魔術師を名乗り始めるのは、もう少し後の話。

next case:吹雪は大変なものを盗んでいきました
基本視点が受けのつもりだったのにいきなり吹藤っぽい(爆)
「かわいい」と「かっこいい」の分担がどうしても逆にできなくて…(笑)

 
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