夢見れば夢も夢じゃない?

「亮、亮ってば、朝だよ起きて」
「ぅん…?」
 眩しい朝の陽射しに視界は白く霞んでいて、亮には状況がうまく把握できない。
(何故吹雪に起こされているんだ…?)
「まだ寝ぼけてるのかい?もう、仕方ないなぁ…」
 そう言って吹雪は亮の顔を上向かせると、優雅に口付けた。
「…?」
「起きた?」
「…今、のは…」
「ん?おはようのキス?」
 きょとん、とした顔で吹雪が答える。
 そう言えば寝ていたのはダブルベッドだし吹雪が用意したらしい朝食までベッドサイドに置いてある。
 そして、ようやく亮は思い至った。
(ああ、そうか…)

 * * *

(オレ達は…新婚で…)
「亮、亮ってば、こんなところで寝ちゃったら風邪引くよ?」
「あぁ、今起きる…」
 霞んだ視界に映る吹雪の顔。
(…今日は、まだ…)
 なおも意識がはっきりとしないまま、半ば無意識で亮は吹雪に口付けていた。
「………え?」
「…おはようのキス…」
 目の前で固まった吹雪を見つめること数秒。
「「…は!?」」
 二人の声がハモった。
 二人の目が見開かれる。
 ここに来て、亮も一気に目が覚めた。
 頭から水をかぶったような、という、あの感覚で。
 いち、に、さん。
「なんだそれはぁぁぁああーーーー!!」
「ちょ、亮落ち着いて!!」
「落ち着けるかぁぁぁあ!!!死ぬ!死ねる!!頼むから死なせてくれぇぇ!!」
「駄目だってば!!」
 亮はやっと思い出した。
 吹雪の部屋でデュエルのDVD鑑賞やらデッキ調整やらで夜更かししまくった結果、まだDVDを見るという吹雪をおいてギブアップしてしまい、少し寝ようとソファで横になったことを。
 要するにさっきまでの光景は、夢以外のなんでもない。
(なんという夢を…!!しかも、しかもその上…!恥ずかしさで死ねる!!)
「だ、大丈夫…?」
「大丈夫じゃない…」
「だよね…」
 半笑いで冷や汗をかいている吹雪に、若干落ち着きが戻ってくる。
「…随分と冷静だな…?」
「亮があれだけ取り乱したら、心配すぎて取り乱す暇も無いよ」
 そういうものかもしれない、と納得しているうちに多少呼吸も収まってくる。
 あいにく顔が赤いのは当分治まりそうになかったが。
「どんな夢見てたの?」
「…………………」
 やけに長い逡巡の後、結局亮は簡潔に答えた。
「………お前との新婚生活…」
「……ぶっ!」
「笑うな!!」
「っ、っっ…ははははっ!!ごめ、無理!!あっははは!!!」
 亮とて客観的に見て爆笑するしかない事態だとは思う。
 だが当事者としては入るための穴を掘りたい勢いで恥ずかしいわけで。
「何故だ…何故あんな…!」
「ははは、それで寝ぼけて…あれ?」
「蒸し返すなっ」
「いや、だって…嬉しかったし?亮からキスなんて滅多にしてくれないから」
 相変わらず笑っているがそこは微妙に真摯なセリフだった。
「…っ」
「面白かったけど」
 これはこれで素らしい。
「面白がるな!!」
「ごめんって」
 ひとしきり笑いの波は引いたのか、気を取り直して吹雪が言った。
「ねぇ、もう一回、駄目かな?」
「…何を」
「亮からキス」
「…………」
 よくこの流れでこのセリフを言えるものだと思う。
 それが不自然に感じられないからなおさらだ。
「…夢でもないとできるか」
 あくまで抵抗するように、亮は言った。
「じゃあ、夢だと思えばいいんじゃない?」
「屁理屈だな」
「なんとでも」
 そう言って微笑む吹雪には、確かに夢なんじゃないかと思わせるくらいに妖艶な雰囲気があった。
 果たしてそれに酔ってしまってもいいのだろうかと思ったのが最後の理性で。
 結局は夢心地で、亮は吹雪に口付けたのだった。

 080317(日記)
 080320(加筆修正転載)

何が新婚だぁぁあああ!!少なくともBLでは絶対やらないだろうと思っていた新婚ネタを思いついた自分にほんと愕然としたwwしかも思いついた時点で完全に亮吹だしww(夢の内容がどう見ても吹雪奥さん)
ちなみに最初は亮が出かけようとして「何か忘れてない?」とか吹雪に言われて目が覚めてそのまま続きでいってらっしゃいのキス〜みたいなすごい王道な感じのアレだったんですがさすがにそこまで完全な吹雪受け書けなかったっていうww無理だよキス待ちとかww
とりあえず寝ぼけすぎな亮万歳。

P.S.友人に夢が素で亮奥さんに見えるといわれました。好きなほうで考えてください(笑)
P.S.P.S.タイトル元ネタは魔法少女プリティーサミーOP。中身関係ないけど!

 
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