I and I/DARKNESS (devided model)

 どこまでも深く、自分の中へと潜っていく。
 深層にある断絶。
 そこに、彼がいた。
「…やっぱり、ここにいたのか」
「ようやく分かったのか」
 面白がるように自分を見つめる、自分と同じ顔。
「まぁね」
 そう言って吹雪は肩をすくめた。暢気な口調で続ける。
「あのときは無謀だったかなぁ、何と闘えばいいのかも分からないのに、闘おうだなんてさ」
「余裕だな」
 襟首と左手首をそれぞれ掴まれて、突き倒された。
 押さえつけられているせいで、若干呼吸が苦しい。
「…乱暴は良くないよ」
 それでも不敵に、吹雪は笑った。
「貴様とは違うからな」
「同じだろう?確かにボクはそういうやり方、あまり好きじゃないけど」
 自由になる足でその腹を思いっきり蹴り飛ばす。
「ぐっ…」
 さっきされたことを、そのままやり返してやる。
「できないわけじゃない」
 今見ているのは、一瞬前の鏡像。
「…用件を聞こうか」
 不敵な笑みも、多分そのままだろう。
 体勢のわりにふてぶてしいのは、それでも取引に有利なのは向こうだからだ。吹雪のほしいものを、向こうが握っている。
「帰ってきてもらうよ。ボクが失くしている記憶と共に」
「貴様が言う記憶は、私のものであって私のものではない」
 そう言ってまた、体勢が反転する。
「貴様にできるか?その記憶だけを取り戻すことが」
「できるさ。ボクがボクを見失わない。それで勝ちだ」
「よく言う」
 今度は吹雪は抗わない。
 だから押さえつける腕に力は入っていない。
 重なり合った存在が、溶けあっていく。
(…うわ、気持ち悪…)
 それはまだ異物だった。それでも吐き出すわけには行かない。奪われた自分自身を、そこから引きずり出すために。

 ―お前はボクだ、そうなんだろう
 ―そうとも言える。だがだからこそ、お前が失くしているものは、私も失くしている
 ―分かれているから。だから今キミはボクじゃないし、その意味で扉なんだ
 ―本当に開く気か?
 ―何故、それを聞くんだい?
 ―ここにあるものは奪われたと同時に、お前が封じたものだ
 ―意外だね、ボクのことが心配?
 ―これはお前の恐怖だ。私はお前の心の闇。弾き出していたほうが幸せだったものを
 ―それを決めるのはキミじゃない
 ―………
 ―キミは、誰?
 ―私はお前だ
 ―まだ違う。このままじゃ記憶は戻らない。…どうすればいい?
 ―…私は誰だ?
 ―…ひとつの名前で呼べない。ボクが持っている名前はひとつ。キミにはまだ名前がある
 ―私の名は?
 ―天上院吹雪、ダークネス、それから…

「…藤原優介」
 呟いたのは、吹雪ただ一人。
 闇の中に、一人だけが立っていた。
 存在のかたちを確かめるように、自分自身をただ、抱きしめた。

 081228

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意・味・不・明!ここまでイミフな話も珍しい。
タイトルは「アイアンドアイ・ダークネス」のつもりでしたが、 半角スラッシュでダークネス付け足してから思いました、「アイアンドダークネスぶんのアイ」と読んだほうが正しいのかもしれない(←しれないて)
解説すると、D吹雪(オレ)の内面を吹雪とD吹雪(私)でモデル化した話(っていうタイトル)
ヘタレ攻めなD吹雪と主導権握ってる受け吹雪、というイメージだけどもちろん別にX指定的なことはしてないです(…)
負けて勝つ吹雪さん萌え。負けても勝ってるって最強じゃないか?

 
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