君がいる世界で僕は
―Original Sin―



プロローグ

 卒業生が新しい未来へ進むため続々と島を離れ、にわかに閑散としはじめていたデュエル・アカデミアで、藤原は一人、窓の外を見つめて佇んでいた。
「元気ないね」
「…吹雪」
 優しい笑顔は記憶と変わらないのに、それでも完全には一致しないのは、流れてしまった時間のせいなのだろう。
 藤原にとっては、あったともなかったとも言える時間。
 「無」と、ダークネスと一体化している間は、そもそも時間の概念自体が存在しなかった。
 だからこそ今の藤原は、吹雪が知っている頃の姿と大差ないはずだった。
「まだ、気にしてる?」
 大勢の人を巻き込んだこと、その後悔を告げた日のことは、まだ記憶に新しい。
 当たり前だろ、と言えなかったのは、それさえ吹雪に甘えるような気がしたからだ。
 けれど、それも予想の範囲内だったのだろう。沈黙する藤原に向かって、吹雪は苦笑して言った。
「見せたいものがあるんだけど、ちょっと着いてきてくれないかな」
「…いいけど」
 何を見せられるのか想像がつかないと思いながら、藤原はそう答えた。


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