君がいる世界で僕は
―Original Sin―



1 ダークネス

 吹雪が藤原を連れてきたのは、島にある火山のふもとだった。
「…ここは…」
「分かる?」
 それは、ヘルカイザーとなった亮と闘うために、吹雪がダークネスの力を使った場所だった。
「…分かるよ」
 一体化していた間のダークネスの思念は、藤原も共有している。
 ダークネスが、吹雪を乗っ取った場所。
「ここでボクは、ダークネスに負けて体を支配された。だけど、あのときボクを支配したダークネスはキミじゃない。違うかい?」
「………」
 藤原は答えない。
「ダークネスは心の闇の集合体だ。その中ではすべての記憶と知性が統合される。だけど十代くんが闘った「ダークネス」は、その中の誰でもない「何か」だった。これってちょっと、おかしい気がするんだよね」
「…何が言いたいんだよ」
 どこか苛立ち紛れに、藤原はそう言った。
「ボクまだ、こんなもの持ってるんだ」
 そう言って吹雪が取り出したカードは、鎖につながれた闇の仮面。
 ダークネスのカード。 
「お前まだ…!」
「そう怒らないでよ、そう簡単に処分できるものでもないんだしさ」
「使う気があるんだろう!?そのデュエルディスクは何だよ!」
 そう言って藤原が指差したのは、吹雪の左腕に装着されているディスクだ。
 それなりに重さのあるこれは、普段から身につける類(たぐい)のものではない。
「あれ〜バレた?さすがに鋭いね」
「分かるに決まってるだろう!?」
「でも、この使い方は知らないだろう?」
 言ってデュエルディスクをアクティブにすると、吹雪はそれをフィールドカードゾーンにセットする。
「やめろ!」
 藤原叫んだのは、いつか吹雪が言ったセリフ。
 それが象徴するのは、今があの時の鏡像なのだということ。
「やめないよ」
 そう言った吹雪の瞳は、ぎりぎりのデュエルを楽しんでいるときのそれだった。


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