二人の吹雪が対峙していた。 闇の力にすべてを委ねたダークネス吹雪、絆を信じるデュエル・アカデミアの天上院吹雪。 ―すべての知性がひとつになり、すべての戦術、すべての力がひとつになる。そのとき人は、初めて最強となるのだ! ―くだらない! ―何? ―くだらないと言ったんだ!すべての力を得る?お前の力は虚無の炎だ。人の無限の可能性は、そんなことのためにあるんじゃない! 「なんなんだ…これは」 呟く藤原は、その世界を空から俯瞰するように見ている。 その傍らで、吹雪が藤原を支えていた。 「ダークネスの力で覗き見したパラレルワールド。あったかもしれない無限の世界の中のひとつ、キミがいない世界だ。この世界じゃ、ダークネスの仮面を作りだしたのはボク自身だ」 「どういうことなんだ、吹雪!?」 「言ったのはキミだろう?ボクの本質はダークネスだと。その言葉が現実になっている世界、それだけのことさ。そしてこのボクは、ある意味でボクと何も違わない」 「そんな…」 「もう少し見てて」 ―私はお前だ。お前には最初から、ダークネスを否定することはできない。 ―分かってるさ。だからこそボクは否定する。キミこそ、その意味が分からないのかい? ―何? ―ボクはもう知っている。キミが何者なのか、ボクが何を考えていたのか。だからこうするんだ…すまない、レッドアイズ。トラップ発動、レッドアイズ・バーン! ―馬鹿な!? ―これがボクの選ぶ未来だよ。キミはボクだ、そこからもう逃げない。ボクが否定したままの、力に惹かれた自分ごと、ボクは自分のすべてを肯定してみせる。闇に堕ちるのは一人でいい! ―やめろぉぉぉ!! 「言ってることは、キミと闘ったときと本質的には違わない。だからこの後の展開も同じなんだ。…後っていうか、ここまではキミの視点で見たときしか無いんだけどさ」 ―これがお前の…私の望む結末だと…。 ―ボクは負けない。希望を捨てない!ひとりで立ってるお前になんか、ボクは屈したりしない! ―フッ…ハハハ!! ―!? ―消えろ。お前のような弱い者は…必要ない! 「目障りだ、消えろ」 「…っ」 「不思議だよね、勝ったら一体化しちゃうのにさ。目障りなやつと一体化しようだなんて」 「…何が言いたいんだよ」 「この時点で、ボクとダークネスの逆転は始まってるってことさ」 ―最後の戦いを始めようか。ダークネスこそが唯一最強。それを証明するために。 「日本語は正しく使ったほうがいいね。唯一に上も下も無いだろうに」 「…言葉遊びだろ」 「言葉遊びは、案外あなどれないんだよ」 ―まだだ十代。この戦いは、お前が最後に立っていればいいんだ。絆が残っていれば、オレ達で奴を倒すことができる。だから、諦めるな…。 ―フッ…あくまで私を倒したいか。ならそれでもいい、お前たちの最高の戦術を見せてみろ。それを倒したとき、私は真に最強の存在となる! 不意に、十代が息をついた。 ―いい加減、その仮面外しちまえよ、吹雪さん。 その言葉に、ダークネスの動きが固まる。 ―…参ったな。 そしてゆっくりと、その仮面を外した。 ―気づいていたのかい? そこにあったのは、正真正銘、天上院吹雪の苦笑だった。 ―デュエルしてれば分かるさ。世界の命運がかかってるっていうのに…オレはこのデュエルが、楽しくて仕方ない。世界中全部のデュエリストと闘ってるような、そんな感じがするんだ。 ―その通りさ。今ボクの中には、ダークネスが取り込んだ全ての人の力がある。取り戻すにはボクに全力を出させることだ。それが解放の方法だよ。来い、十代くん! ―ああ、覚悟しろよな! |