たまにはデュエルアカデミアに立ち寄ってみようか。
 そんなつもりでアカデミアに行って、それが明日香の留学が終わる頃だなんてことは、実のところ頭にはなくて。
 示し合わせたような偶然の再会におめでとうを言ったら、ありがとうの後に、デュエルを申し込まれた。
 もちろん、意気揚々と受けて立った。


 ENDLESS DUEL


 久しぶりの手ごわい相手。
 大胆な戦術は変わらない。
 十代のライフは2600、明日香のライフは200。
 ライフポイントは十代が有利だが、気がつけば十代の場はがら空きで、明日香のターンを迎えていた。
「速効魔法、《プリマの光》を発動!《サイバー・チュチュ》を生贄に捧げて、《サイバー・プリマ》、召喚!」
「来たな!」
 強敵の出現に、十代の瞳は生き生きと輝く。
 そんな十代に、明日香は言った。
「変わらないわね、十代」
「ああ、お前もな」
 ひとしきり二人で笑った。
 十代を見つめる明日香の髪が、風にたなびく。
 明日香は、最高の笑顔で言った。
「十代、私ね、あなたのこと大好きだった!」
 突然の告白に、十代がぱちくりと目をしばたたかせる。
「ずっと、もう一度こんな風にデュエルしたかった。だから本当は、このデュエルも終わらせたくないの」
「明日香…」
「でも…それじゃ駄目なのよね。今でも好きよ、十代。だから、答えをちょうだい」
 すっ、と、その右手が風を切った。
「《サイバー・プリマ》で、十代にダイレクトアタック!終幕のレヴェランス!」
 十代のライフが残り300になる。
「カードを一枚伏せて、ターンエンド!」
 一枚の伏せカードと一体のモンスター。
 明日香を見つめたまま、十代はカードをドローした。
「…オレのターン、ドロー!」
 ドローしたカードを確認して、十代は高らかに宣言する。
「墓地にあるネクロダークマンの効果発動!手札から、《E・HERO(エレメンタルヒーロー)ネオス》を、生贄なしで召喚!」
「来たわね…!」
 十代と同じセリフで、明日香はネオスを見据えた。
 サイバー・プリマへの攻撃が通れば、十代の勝ちだ。だが明日香のフィールドには、まだ一枚の伏せカードがある。
 闘志の消えないその眼差しを見つめて、十代は不意に、その手を下ろした。
「…え?」
 ぽりぽりと頭をかいて、十代はこう言った。
「…終わらせないと、駄目か?」
 きょとん、とした明日香に、十代は苦笑する。
「明日香、その伏せカード、《ドゥーブル・パッセ》だろ」
「…どうして、分かったの?」
「お前の一番好きなカードだ」
 優しく、十代は微笑んだ。
 《ドゥーブル・パッセ》は、モンスターへの攻撃をプレイヤーへのダイレクトアタックにするカード。ネオスで攻撃すれば、十代が勝つということだった。
「明日香がそれでいいって言うなら、いいけど。オレも…終わらせたくないな、お前とのデュエルは」
「十代…」
 穏やかな表情で語られる声は、不思議に深い。
「どっちがいい?」
 包み込むように、明日香を見つめる瞳。
 このままデュエルを終わらせるか、それとも―
 明日香の構えが解けて、ソリッドビジョンが消えた。
「あなたの勝ちよ」
 微笑んだ明日香に向かって、十代が歩きだす。
 少しずつ早くなる鼓動に乗って、明日香を抱きしめた。
「オレも好きだぜ、明日香」
 明日香の腕が十代を抱き止める。
 閉じたまぶたから、涙がひとつこぼれた。
 言葉の代わりに、優しく唇を重ねた。

+++

実は笑顔で「大好きだった!」がやりたかった。
やっぱGXなら告白はデュエルだろ、と考えた結果、中身はこんな展開に。
ネオスの攻撃をドゥーブルパッセで十代から明日香へのダイレクトアタックに!(笑)
そんなGXが好きだ(笑)

 091014(chips初出)
 091016(加筆転載)

 
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