カラーレス・カラード・エモーション 4
 ミエナイシンジツ


 吹雪に惹かれていると、そう思ったのは、そう遠い日のことではない。むしろ最近だと言ってもいいくらいだ。
 それでも、それは確信だった。
 けれど一方で、その意味が何なのかは分からなかった、何なのか気にもならなかった、ただ「好き」だと思った。
 だから言うつもりはなかった。決める必要はないと、思っていたから。
「…というのは、逃げだと思うか?吹雪…」
 自分の部屋で、亮は一人ごちる。
 たった一週間。いつもと同じ生活の中で、関係に違う名前をつけただけの一週間が、痛いくらいに幸せだった。それが仮初に過ぎないと分かっていても、確かに喜びを感じていた。
 関係はまだ、解消していないけれど。
 手に入れてもいないものに感じる喪失感が、確かに存在していた。

 090512

 +++ 5 フタリのソトガワ に続く +++

一番短いけど、実は一番お気に入りだったり…。

 
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