サーフィス・チェンジ ここはブルー寮の亮の部屋で、当たり前のようにそこには吹雪がいて、他愛もない話をしながら紅茶など飲んでいたわけだが。 「吹雪」 「なんだい?」 「公然とべたべたするにはどうしたらいいだろうか」 ぶっ、と、吹雪は飲んでいた紅茶をふきだした。 真顔で聞かれれば当然だろう。 「ボクじゃないんだからそういうこと簡単に言わないでくれる!?お願いだから!!」 「お前はこんなことは言わないだろう」 「そうだけど!世間様のイメージってものがあるんだよ!!」 「ここで何故そんなことを気にするんだ?」 「うん確かにそう、そうなんだけどね…」 ぐったりと、吹雪が肩を落とす。 それを見つめて、亮が呟くように言った。 「…嘘は嫌いで、」 途切れた言葉に、吹雪の視線が誘われる。 「隠し事は苦手だ」 うつむきがちにそう言った亮を、吹雪は抱きしめた。 「…キミのそういうところが、大好きだよ」 体を離して、まだ不安げに見つめる視線に応える。 「だけど、人に見せつけるようなものでもないだろう?」 その言葉に、それは分かっているとでも言うように、今度は亮が吹雪を抱きしめた。 「…そういうお前は、まだ引け目を感じてるんだろう」 同性とつきあうことに。 ぎくりと、吹雪の体が強張る。 それさえもいとおしむように、亮は吹雪を抱きしめる腕に力をこめた。 「…そうだね」 少なくともここでは、隠し事をするような理由はない。 それぞれに足りないものを補うように、口づけを交わした。 「…こういうことを、せめて隠しているような気分は、もう、したくない」 それはあくまで、正当な要望だった。 「…うーん、どうしたものかなぁ…」 しばらく抱きしめたまま考えて、吹雪は思いついて言った。 「…じゃあ、こういうのはどう?」 * * * 「…それは、嘘をつくことにならないか?」 「どうだろう?確かに表面上はそうかもしれないけど…ボクとキミは、そんなにも違うものなんだろうか」 「…どういうことだ?」 「言葉や身振りを交換しても、多分本音で動けばうまくいくよ。ボクはキミ、キミはボク。それでいいじゃない?」 理論上は明らかにおかしいのだが、吹雪が言うと何故か筋が通っているような気がしてくるから不思議なものだ。 「…藤原は乗ってくるか?」 「賭けには違いないけど、間違いなく乗ってくれるね!そこは信頼だよ」 暫く考えて亮が言ったセリフは、こんなものだった。 「…実行は、4月1日」 折衷案として出したのだろうその言葉に、吹雪は笑う。 「りょーかい」 * * * 数週間後。 「藤原。オレ、気づいたことがあるんだ」 「何?」 「…あの二人、カイザーに寄ってくの自体は吹雪さんからだけど、体に触るのはカイザーからしかない…」 「…意外と目ざといな」 「…なんか、隠してることねぇ?」 「…言わぬが花、っていうこともあるんだよ。十代」 「そっか…よくわかんねぇけど」 真相は結局、闇の中だった。 |