limit→PERFECT 1
 微笑みの向こう側

 ぐったりと寝そべった吹雪が、苦笑して言った。
「亮もなんていうか、やっぱり…男だよね〜」
 疲れさせたらしいと、亮は慌てて謝る。
「すまない、調子に乗りすぎた…」
「はは、大丈夫だよ。それに…」
 寝返りを打つようにして、吹雪が天を仰ぐ。
「こんなとこに引きずり込んだのボクだしね。いくらでも抱かれてあげるよ」
 茶化すようにそう言って笑う吹雪に、亮は憮然とした顔で抗議する。
「…体目当てみたいに言わないでくれないか?」
 そう言って、亮は吹雪を抱き起こした。
「オレは、抱けるからお前を好きになったわけじゃない」
「ごめん」
「それから。お前に言われたから好きになったわけでもないんだ。間違えるな。…というか、気にしているのは、お前のほうなのか?」
「…え」
 唐突に、それはもう唐突に予想外の切り返しを受けて、吹雪は戸惑う。
「オレは多分、お前が思うほどお前と…男と付き合うのに、抵抗を感じてはいないんだ。だから逆に、気づいてやれなかったのかもしれないが…」
 真摯な瞳が、吹雪の眼を捉える。
「…無理して、いるのか?」
 そんなつもりはない。なかった。
「………」
 それなのに、答える言葉が見つからない。
 搾り出すようにして、吹雪は言った。
「…無理なんて、してないよ」
 してるだろうと言われても仕方の無い声だと、吹雪は自分で思う。
 まっすぐすぎる亮の目が見れなくて、自然と伏し目がちになる。
「そりゃたまに、どっちか女の子だったら話は簡単なのにとか、思うけど、でもそれじゃこんな風に親しくなれなかったかもしれないし、下手したら出会えなかったかもとか、っていうか考えても仕方ないしとか、なんていうか…」
 震えるような声で、言った。
「…ボクは、亮が、好きなんだよ。男だってところまで含めて、亮じゃないか。それは、ボクだって、同じだし…」
「吹雪…」
「…ほんと、嫌になる…っ」
 自嘲気味に笑ってみても、こらえきれない嗚咽がこぼれ始める。
 その涙をどうすることもできなくて、亮はただ吹雪を抱きしめる。
(オレのせい…なんだろうな)
 それでも、どれだけ泣かせても、手放せはしないんだろうと、その腕に力をこめた。

 080525

 +++ limit→PERFECT 2 その先に潜むもの に続く +++

元々これは、単発のつもりで書いた亮吹初挑戦短編…のはず、でした。

 
BACK