それを目にしたのは、ほんの偶然だった。
放課後は用があるからと言われたのは朝方のことで、その内容など深く追求しようとは思わなかった。 だから吹雪ともう一人、女の子が一緒にいるのを見て、多少の動揺はした。ただ何故か真っ先に思ったのは、「なるほど」という奇妙な納得だった。 limit→PERFECT 2 その先に潜むもの 例えば浮気だとか、そいういうことを疑おうとは思わなかった。普段あれだけ派手な振る舞いをしておきながら、彼は不誠実とは程遠い。 だから告白のために呼び出されたのだろうくらいのことは予想がついて、そういう意味での動揺はほとんど無かったと言っていい。 それなのに、落ち着かない。 二人から目が離せなくて、気づかれないように見つめてしまう。 必死で告白したのだろう女の子に、吹雪は悲しげに何か言っている。多分それは「ごめんね」だとか、「好きな人がいるから」だとか、そういうセリフだったのだろうと思う。 「…ありがとう」 最後に、それが聞こえたと思ったのは、あるいは気のせいだったかもしれない。 けれど最後の言葉がそれだったのだと、何故か確信した。 女の子が去っていったのを確認してから、亮は吹雪へと近づく。 「…っ亮」 さすがに見られているとは思わなかったのだろう、慌てて言葉も出てこない吹雪に、亮自身も、何を言いたいのかはっきりとは分からない。 だからその腕を掴んで、二人きりになれる場所―とりあえず自分の部屋まで、連れて行こうととっさに思う。 「え…ちょっと、どうしたんだい?」 「…分からん」 腕を掴んだまま歩き出す亮に、戸惑いながらも逆らいはしない吹雪に、苛立ちが募る。 「…誰かに見られないといいけど」 小さく呟かれた言葉が、やけに耳に残った。 * * * 部屋に入るなり、閉じたドアに迷わず鍵をかけて、亮は吹雪をベッドに押し倒すと、その唇を奪った。 なんの前触れも無く、触れるよりも深く求めてくる口付けに、吹雪は幾分ためらったようだったが、おずおずと応えてくる。 それさえも苛立ちを募らせる原因にしかならなくて、亮自身がどこかで困惑している。 離れていく亮の顔を見上げて、吹雪が言った。 「亮、もしかして…怒ってる…?」 「…そういうわけじゃ、ない」 似ているけれど、違う。 自分でも理解できない思いに駆られて、吹雪の制服のボタンを外しにかかる。 「え、亮、待って!」 「待てない」 「…待てないって」 亮の性急な様子に、吹雪は何か言おうとして、やめる。 (今、何か、…許された、のか) ぶつりと、何かが切れる音がした。 急にその手を止めた亮を、吹雪がいぶかしげに見つめる。 「…吹雪。あまりオレを、甘やかすな」 「え…」 意味がわからないという風に、吹雪の目が瞬く。 制服の上着を半端に脱がして、その袖で吹雪を後ろ手に縛る。 「亮!?何をす…っ」 さすがに驚いて、抗議の色も混じった声を、唇で奪う。 「ん…ふっ」 (優しく、してやれない) これは、焦りと独占欲。 どこかでもう、知っていた。 080526 |
+++ limit→PERFECT 3 明かせるのは君だけ に続く +++ |