四、断絶―人が人を捨てるとき 彼はいつか、優しいお姫様と結婚して王となるのだろう。誰からも祝福されるそれが、彼のためにもこの国のためにも、一番良いことなのだろう。それを彼の一番近くで祝福できるなら、それでいいと思っていた。 * * * 「お前の友は、その心の中に強大な覇王の力を持って生まれた。その力はいつか、優しい闇に包まれた宇宙を救うだろう。しかし、少年の心が大人に成長するまで、誰かが彼を守ってやらねばならない」 呼び出しを受けたユベルが聞かされたその話は、ユベルにとって初耳ではなかった。王もそれは知っているだろう。何も知らない人間に話せるほど、それは軽い話ではない。 宇宙を救う使命を持つ少年を守る力。誰よりも強い力を守護する矛盾は、守護者に人ならぬ存在と化すことを要求してくる。 そして、その話を王が直々に語るということは、そのままユベルへの依頼を意味していた。 「王よ、ボクにその役目をお申し付けください」 「しかし、少年を守るためには、誰にも傷つけられぬ硬い鱗の鎧を身につけねばならぬ。そなたの若く美しい肉体は、二目と見られぬ、醜い竜の姿になってしまうのだぞ」 「構いません。彼を守るためなら」 対価として差し出さなければならないそれは、とっくの昔に不必要になったもの。邪魔でさえあったかもしれない、女性という属性をもつもの。 (全部いらない。私の全ては、彼のためにあるのだから。いや―) 彼を守れるたった一人の人間。 それはユベルにとって、他の誰にも譲れない役目だった。 * * * 人知れず交わされた王とユベルの契約は、儀式を執り行う人間以外に知らされることはなかった。 王子がその契約を知ったのは、ユベルが竜になるための儀式が、既に始まってしまった後のことだった。 |