九、混濁―生まれ落つ魂の後継 どれくらいの時が流れたのか、もう、思い出せない。 抱いていたはずの何かは既に跡形もなく、気がつけば自分自身を抱きしめていた。 「…ボクは…」 凍えるように寒い。 何も思い出せない。 何もかもを忘れてしまった。 何か大切なものさえ それはとてもとても大事なもの なのに分からない 思い 出せ る の は ― 「ボクの愛は…永遠に、キミだけのもの…」 ボクは誰? キミはボク? キミは誰? 「キミは…ボクの…愛しい人」 「…ユベル?」 「―っ!」 ああ、それは、その声、その名前は― * * * 「いつも一人にしてごめんな、十代」 「ううん、みんなとデュエルできるから大丈夫だよ。お仕事お疲れ様」 「ありがとう。十代は本当にデュエルが好きだな。はい、お土産だよ」 「…ユベル?」 「喜んでくれるかい?」 「パパ…ありがとう!」 * * * 「こんにちは、ユベル。ボクは十代。よろしくね」 ユベル、それはボクの名前。 その名前を呼ぶその声を、ボクは知っている! “ねぇ、ユベル。ボクの愛は、永遠にキミだけのもの。もしも生まれ変わっても、ボクはきっとキミを見つける。そのときはボクの名前を呼んで” ボクは十代―キミは十代。 ボクはユベル、キミは十代。 十代。十代、十代!十代!! ボクはユベル!キミは十代! ボクの愛は永遠にキミだけのもの! キミの愛は永遠にボクだけのもの! キミはボクの愛しい人!! ああやっと、やっと思い出した! 「愛してるよ、十代」 キミはボクの、ボクだけの十代― |