天才トリオ中学生パラレル
小さな十字架

 
 episode3 こうきしん

 教室の雰囲気は相変わらずだったが、藤原が知っているという安心感のせいか吹雪個人の気分はかなり和らいでいた。
 だからその教室の中で、自ら望んで浮いているのだろう丸藤亮のことが気になってきたのは、若干生まれた余裕の表れだったと言えるだろう。

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 二階の廊下、藤原の教室前で、二人が話していた。
「授業サボってるときって、非常階段に一人でいること多いみたいだぜ、あいつ」
「よく知ってるね」
「職員室行ったら勝手に聞こえてくるじゃん」
「え、そう…?」
 二人の在籍している弱小化学部には現在三年生がおらず、部長藤原、副部長吹雪、他はほぼ幽霊部員な一年が数名というありさまで、勢い二人は活動場所となっている理科室の鍵の受け渡しに職員室に行くことが多い。
「…お前、よっぽど周り見えてなかったんだな」
「う、…そうかも」
 呆れ半分同情半分にため息をつかれて、吹雪はあいまいに頷く。
 藤原のほうが微妙にいたたまれなくなって、ふと下を見下ろすと。
「…あれ、丸藤じゃないか?」
「…え?」
 上から見ないと死角になるだろう校舎の影で、噂のご当人が一人の少年と相対していた。
 文字通り、喧嘩腰で。

「お前ムカつくんだよ!」
「奇遇だな、オレも同意見だ」
「ふざけやがって…っ」

 会話の内容自体は二人には聞き取れなかったが、目の前で始まった殴り合いに一瞬ひるむ。
「え、ちょっと、先生呼んだほうがいいのかなこれ」
「しかないよな…行こう」

 +++
 
 結局教師が止めに入って、二人は喧嘩両成敗で納められたらしい。
 遠目からも分かる二人の剣幕に、吹雪と藤原はさすがに教師に一緒についていく勇気までは出なかったから、それは後から聞いた話だ。
 もちろん亮は教室でもどこか殺伐とした空気を放っていたが、少なくとも表面上は落ち着いていて、今日目にした喧嘩真っ最中のとげとげしさは、少なからず吹雪にはショックだった。

 090207
 
 +++ episode4 たいしたことじゃない に続く +++


ま さ か の エ ド 。隣町じゃなくて同じ学校に変更しました。
「お前ムカつくんだよ!」っていつのセリフでしたっけ?(おま)
体格差で亮圧倒的有利な気もしますが、年の差が1つに縮んでる上中学生なので互角ってことで。

 
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