episode5 こいごころ 一人非常階段に座っている亮は、吹雪と一緒に初めて声をかけたときよりずっと落ち着いて見えた。 無言でその隣に腰掛けると、亮は一瞬だけこちらを見て、そしてまた視線を戻した。 何を見るでもなく同じ方向を見つめて、少しの時間が過ぎる。 ぽつりと、藤原が呟いた。 「お前さ、…ひょっとして天上院のこと、好きだったりする?」 特に驚いた様子もなく、亮は言った。 「…やっぱりお前もか」 気づかれていたのには少し驚いたが、亮を少ししか知らない自分が気づくのだから、亮が気づくのは当たり前なのかもしれない。吹雪を見ていたなら、きっと自分のことも見えていたのだろうから。 「告白とかしないの?」 それで吹雪が亮の告白を受け入れたら自分はどうするんだとか、そういうことは何故だか思いつかなかった。 「するつもりはないな」 淡々と、亮は答え続ける。 ずっと前から決まっていたように、ずっと前から決めていたように。 「なんで?」 「…さぁ、なんでだろうな」 遠い瞳で、亮はそう呟いた。 はぐらかしたのではなく、本当に分からないんだろうと、藤原は思った。 090116 +++ episode6 くだらない に続く +++ |
淡々と…って短すぎですねはいすみません。幕間的に。 藤原がえらい乙女ちっくですねこのシリーズ。いやいつもか。 3話書いたあとの追記:…あの亮が、こういう反応になるか?(爆) 亮→吹雪がありえたとして多分もっと複雑な感情になるという事実に頭を抱える今日この頃(爆) |